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"技能実習廃止" 求められる制度は


外国人が働きながら技術を学ぶ技能実習制度。30年続くこの制度について、政府の有識者会議は4月10日、「廃止して新たな制度へ移行を求める」たたき台を示しました。

“国際貢献”という理念と実態がかけ離れていると指摘される技能実習制度。何が問題でどのような制度が望まれるかを解説します。


【技能実習制度とは】 技能実習制度は1993年に始まりました。 外国の主に若者が、働きながら日本の進んだ技術を学ぶ。人材育成を通じた「国際貢献」が建前となっています。雇用関係の下で、労働関係の法令が適用されています。 全国でおよそ32万人。期間は最長5年。現在は半数以上がベトナムからです。報酬は「日本人と同等かそれ以上」とされます。

4年前からは「特定技能」という新たな在留資格も始まりました。技能実習生は3年働けば無試験でこちらへ移行もできます。特定技能は1号が最長5年。2号になると永住も可能とされます。

【孤立出産めぐり無罪判決】 3月、この技能実習生をめぐって、最高裁で無罪判決が言い渡されました。 ベトナム人実習生の女性は、死産した双子の赤ちゃんの遺体を自宅に放置したとして死体遺棄の罪に問われました。最高裁は「遺棄とは言えない」と無罪を言い渡しましたが、彼女は、妊娠を知られると帰国や退職を迫られると恐れ、周りに相談できないまま、孤立出産していました。

入管庁の調査では、「妊娠したら仕事を辞めてもらう」などの不適切な発言を受けたことがある実習生は26、5%。4人に1人に上っています。

【課題①転籍できない】 そんな不適切な発言をする会社は、辞めればいいと思うかもしれません。 ただ、技能実習生は職場を変える・転籍が原則として認められません。同じ会社で働くしかないのです。 転籍できないことが、人権侵害を生み出す要因と指摘されます。賃金の不払いや暴力などで国から認定や許可を取り消された事業者は一昨年度、大幅に増えて177に上りました。

【課題②特定技能へ移行できない分野も】 私はさきほど、実習生は無試験で特定技能へ移行できると言いました。特定技能になれば、転籍も可能です。 ところが現在、特定技能1号は12分野しかありません。例えば繊維分野などは「特定技能」がなく、実習生がこちらへ移ることはできません。さらに2号はまだ建設と造船などの2分野だけ。2号の認定は全国わずか8人。 これでは絵に描いた餅という側面があるでしょう。

【課題③借金を抱えて】 さらに、特に海外の悪質なブローカーに多額の金を払い、借金を背負って来日する実習生も多くいます。 入管庁の調査だと、最も多いベトナム人実習生は実に80%が借金を抱えて来日し、その額は平均67万円。来日のため支払った金額の平均が68万円。つまり、ほとんど全額借金していることになります。 多額の借金を抱えたうえ、職場を移ることもできない。キャリアアップの道ができていない。 失踪した実習生は7100人に上っています。

【厳しい批判も】 ILO・国際労働機関は条約で「民間の仲介業者は、労働者からいかなる手数料や経費も徴収してはならない」などと記しています。 日弁連・日本弁護士連合会は意見書で、技能実習生に多額の負担を強いる現状を「実質的な条約違反だ」と批判しています。

2月、政府の有識者会議のヒアリングに出席したILO駐日事務所の幹部は「人材育成の観点では、あまり貢献できていない」「転籍の制限は強制労働につながりかねない」「労働者を安く使おうという発想では、完全に手詰まりだ」などと厳しい批判を述べています。

まとまった「たたき台」】

政府の有識者会議は、今月10日、中間報告のたたき台を示しました。

▽そこでは技能実習制度を廃止することを明記し、新たな制度への移行を提言しています。

▽「国際貢献」という看板を外し、「人材確保」を明記します。

▽一方で海外からの「人材を育成」するという目的は継続します。

▽課題とされる転籍も緩和して一定程度認める。

▽実習生の監理などを行う団体などは、要件を厳格化したうえで、継続するとしています。

たたき台を元にさらに議論を進め、秋ごろをめどに最終報告書を提出する予定です。


【望ましい「あるべき姿」は】 では、あるべき制度へ向けて議論が求められるのは、どのような点でしょうか。 まずは特に海外にいる悪質なブローカーの排除です。来日する時点で多額の借金を抱える現状は、解消する必要があります。

借金を負わせないようにする取り組みを始めた企業もあります。 繊維の専門商社、帝人フロンティアは、グループ会社で合計数十人の技能実習生が働いています。2019年から、実習生が来日する際の費用は、会社が全額負担する取り組みを始めました。 現地の送り出し機関が実習生から手数料を受け取っていないことを、確認しています。その後、失踪は一人もいなくなったということです。 岡本真人部長は「不安なく働いてもらうことが、安定した労働につながる。また、優秀な人材が集まるようになる」と話しています。 ただ、こうした企業の取り組みは、まだごく一部です。

そして転籍の柔軟なルール化も必要です。都市部へと人材が流出してしまうという、特に地方の中小企業から懸念の声も聞かれます。 一定のルールへ議論が求められますが、一部の不当な扱いを抑制するためには、職場を変える仕組みを認めることが望ましいでしょう。 どの職種でも、実習生が希望すれば特定技能へと移行できるようにすることは、地方の企業にとっても人材の確保に役立ちます。地方でも同じ企業に長くとどまって、キャリアアップを目指すことも可能になります。 私は現場をいくつも見てきましたが、目先の給料よりも生活費の安さや暮らしやすさから、あえて地方を選び、長く働く外国人も少なくありません。 経営者も分け隔てなく接し、実習生も借金を返し、転籍の必要もなく、生き生きと働いている人は、たくさんいます。 ただし、だからといって問題を放置することはできません。大切なのは、差別的な扱いを生み出す余地を徹底してなくすことでしょう。


【日本の将来の選択】 ここまで話を聞いた人の中には、そもそも「外国人労働者などいらない」という意見の人もいるでしょう。それも確かに選択肢の一つでしょう。

JICA・国際協力機構が去年まとめた試算では、2040年に必要になる外国人労働者は現在の4倍近い、674万人に上るとしています。 「外国人労働者はいらない」ということは、これだけの労働者がいない日本の将来を受け入れるということでしょう。 今、技能実習生が全国で働く農業や漁業は、人手不足からあちこちで成り立たなくなるでしょう。介護分野なども担い手がいなくなる。 こうした社会を容認するか。それとも、外国人が魅力を感じてやってくる日本を目指すか。 この問題は、少子化が続く日本の将来の姿に関わってくると言えそうです。

【「助けてくれる制度を」】 孤立出産し、最高裁で無罪判決を受けたベトナム人実習生だった女性は、判決前の取材に「実習生が困っているときに周りが手伝ってくれなかった。困っているときに助けてくれるように、制度が変わってほしい」と話しました。 新たな制度を作るのであれば、実習生も事業者も笑顔で働ける。そんな当たり前の仕組みを実現し、単なる看板のかけ替えに終わらないよう、今後も議論を深めてほしいと思います。


https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/482251.html

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